企業のアジア進出「ベトナムへの海外進出を考える」

003Q:海外進出にあたり、現在、候補地の1つとしてベトナムが挙がっている。ベトナムの投資環境と設立許可など行政手続きについて、概要を教えてほしい。


 

A:ベトナムと言えば、おびただしい数のバイクがけたたましい音を立てて、目の前を通り過ぎていく。そんなイメージだと思います。バイクの台数は3,000万台を超えており、正にバイク大国です。また、ベトナムの国土は縦に長く、形が龍に似ていることから、「昇り龍の国」とも呼ばれています。2017年現在、ベトナム人の平均年齢は30代を切っており、10~20代の層が厚いベトナムは、活気にみなぎっています。

 

ベトナムの歴史

若い平均年齢の背景には、多くの大人がベトナム戦争で戦死した暗い歴史があります。その歴史の大部分は諸外国からの再三にわたる侵略と支配、それに対する抵抗と独立運動の繰り返しでした。1976年にベトナム社会主義共和国が成立するまで諸外国に対する抵抗を続けてきたこの国の歴史は、プライドが高いと言われる国民性にも少なからず影響しています。

 

ベトナムの経済

ベトナムは、社会主義国ながら、1986年に独自の経済政策「ドイモイ」で、部分的に資本主義を採用し、経済成長を続けてきました。アジア経済危機の影響で1999年には成長率4.8%に低下しましたが、海外直接投資の順調な増加も受けて、2000年~2010年の平均経済成長率は7.26%、2015年単年の成長率は6.68%と高成長を達成しています。

2013~2015年の日系企業の投資件数及び金額を見てみると、投資件数については、500件(2013年)、517件(2014年)、456件(2015年)、投資額については、58.7億米ドル(2013年)、23億米ドル(2014年)、18.4億米ドル(2015年)と、投資額は減少しているものの、件数自体はほとんど減少していません。つまり、中小企業のベトナムへの進出が増加しており、今後も増加することが見込まれます。

 

ベトナムの投資環境

投資促進機関 計画投資省(MPI)、商工省(MOIT)、ベトナム商工会議所(VCCI)など。
規制と奨励

2015年7月1日に有効となった投資法は、禁止経営投資分野6分野と条件付投資分野267分野(2017年1月1日現在、243分野)について明記しています。

また、2014年投資法では奨励投資分野及び奨励投資地域を規定し、外国資本による投資、国内資本による投資に拘らず、優遇措置を付与しています。

奨励投資分野

1.ハイテク活動や研究開発活動など

2.リーンエネルギー、再生エネルギーの生産など

3.電子製品、重機、農業機械、自動車、自動車部品の生産、造船

4.繊維、皮革分野製品などの生産

5.情報技術、ソフトウェア、デジタルコンテンツ製品の生産

6.農林水産物の養殖及び加工、森林の植栽及び保護、海産物や漁業のための物流サービス、バイオテクノロジー製品の生産など

7.廃棄物の収集、処理、リサイクルなど

8.インフラストラクチャー構造物の開発および運営、管理に関する投資など

9.幼児教育、普通教育、職業教育

10.診察及び治療、医薬品や医薬品の原料、ワクチンなどの生産、各種新薬の製剤技術など

11.障害者または専門家のための訓練、体育競技施設の投資など

12.枯葉剤の患者治療センター、老人ホーム、養護センターなど

13.小規模金融機関等 

奨励投資地域

1.経済・社会的に困難な状況にある地域

2.工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済区

資本金に関する規制 外国企業がベトナムに会社を設立する際の資本金の金額は、原則自由に設定できますが、一部の条件付投資分野に関しては一定の法定資本が必要とされます。
  • 銀行業3~5兆VND(約150億円~250億円)
  • 保険業3,000億~1兆1,000億VND(約15億円~55億円)
  • 不動産事業200 億VND(約1億円)など              ¥1=201.33VND(2017.2現在)

ただし、実務上は、上記以外の分野についても、資本金額が事業内容から見て、少ないと当局が審査で判断した場合は修正を求められることがあります。

出資比率 ベトナムにおいては、一部の事業については外国投資家による投資が完全には認められていません。ロジスティクス分野や通信分野、娯楽サービス、運搬サービス、ゲーム事業サービスなどの条件付投資分野の事業については、100%外国資本による会社の設立は許可されていません。例えば、娯楽サービスについては、外国企業の出資比率が合弁会社の資本金の49%を超えてはならないとされています。

 

ベトナムでの設立許可証の発行

ベトナムでは、申請書類に問題がなければ、書類受理後、原則15営業日以内に設立許可証を発行すると定めていますが、実際は2~3ヶ月後に発行されています。また、書類に不備があると担当官が判断すれば、受理しない場合も多くあります。行政手続の運用細則がなく、解釈が担当官により異なることがあるのが現状です。

 

(2017年1月15日 日本経営ウイル税理士法人 海外事業部 課長 藤井邦夫) 

 

本稿は一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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