企業のアジア進出「タイへの海外進出を考える」

003Q:競合先がタイへの進出を進めており、危機感を募らせているが、誘致政策ばかりでなく外資規制もあると思う。投資環境の概要について教えてほしい。


 

A:日本の製造業は、タイ政府による戦略的な外資企業誘致を背景に、この20年ほどの間、タイでの生産拠点を増やしてきました。その基礎になっているのは、仏教徒が多いことから日本人がなじみやすい国民性や文化を持ち、優秀で、豊富かつ安価な労働力です。タイに進出している日本の製造業の代表である自動車産業では、2次・3次下請けを含め2000社超がタイに進出し、40万人の雇用を創出しているといわれます。また、電機産業のHDDやデジカメについても、タイは世界有数の生産地となっています。

このように、現在タイと日本には、タイのことを「日本産業界の裏庭」と言い表わすことができるほどの産業の関連があります。このことは、2011年にタイで発生した大洪水の結果、タイの工場が止まることでサプライチェーンへ影響が出て、日本の企業の工場が操業停止に追い込まれたことでも明らかです。今や日本とタイは、まさに切っても切り離せない関係であると言えます。

なお、タイでは周辺国と比べ突出して裾野産業が発展していたため、洪水後も、日系企業のタイへの進出が滞ることはありませんでした。近年では、アセアン地域の製造の統括拠点としての活用も注目され、「東洋のデトロイト」とも呼ばれています。近年では、製造業のみならず、日系の飲食・サービス業のタイへの進出も相次いでいます。これは、拡大しているタイの中間層や、7万人や10万人ともいわれる在留日本人を対象としています。今後ますます、日本とタイのつながりは強くなっていくと思われます。

しかし、日系企業が海外進出を検討する際は、まず進出先の国の外資規制(外資系企業のタイへの投資についての規制)について把握する必要があります。つまり、展開を検討している事業を行えるのか、業務を行える場合の障壁・規制はどのようなものかを確認します。その後、投資奨励のメリットになる、外資誘致政策を享受できないか確認します。法人税の減免や輸入税の免除などです。

タイにも、経済及び技術発展のため、外資誘致政策(BOIの投資奨励法やIEAT)があります。しかしその一方で、自国資本の保護・育成ために外国資本に対しては、「外国人事業法」による規制を設けています。投資奨励で外資の積極的な投資を呼び込むと同時に、外資規制で自国の企業の経済発展を促し、タイ国内の経済活動の活性化を促しているのです。

 

外資規制/業種に関する規制

外国人事業法(FBA:Foreign Business Act)は、規制業種を3種類43業種に分け、それらの業種への外国企業の参入を規制しています。この場合の外国企業とは、外国資本50%以上の企業をいいます。紙面の都合上、規制業種についての詳細は省略させていただきますが、タイでは製造業以外の業種のほとんどは規制業種となります。つまり、サービス業など、製造業以外の業種で進出をしたい企業は、出資比率50%未満の合弁会社等として進出しなければ業務が出来ない事になります。

製造業以外で進出する場合は、タイ人もしくはタイ企業のパートナーを見つける必要があるのです。しかし、タイ側のパートナーを手当てする方法は複数あります。詳細をお聞きになりたい方はご相談下さい。現在のところ、タイの外資規制は、あくまでも出資比率の要件のみとなっており、タイ人を取締役に就任させなければいけないなどの要件はありません。これは、周辺国に比べ比較的緩い外資規制だといえます。

 

外資規制/資本金に関する規制

タイ法人(タイ資本が50%以上の会社)には、最低資本金の規制はありません。しかし、外国人の労働許可を取得するためには、外国人(日本人など)1人につき払込資本金200万THBとタイ人4名の雇用が必要という制約があります。ですので、日系企業がタイに進出する場合の最低資本金は200万THBとなります。

外国法人(タイ資本が50%未満)の最低資本金は200万THBですが、規制業種で特別な許可を取得して事業を行う場合は、原則として最低資本金は300万THBとなります。つまり最低資本金は、外資系企業にとってはほとんどの場合、実質200万THB(約640万円)ということになります。(2017年1月現在1THB=3.2円)

 

タイへの進出の留意点

このように、タイへの進出を検討する際は、業種規制(原則、製造業以外の場合、タイ人・タイ企業の50%以上の出資が必要)と、資本金規制(最低資本金の規制がはないが、外国人の労働許可を取得するために、外資系企業の場合、実質、ほとんどの場合200万THBが最低資本金となる)に、まず留意する必要があります。

 

(2017年1月15日 日本経営ウイル税理士法人 海外事業部 課長 藤井邦夫)  

 

本稿は一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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